大阪における家賃増額請求・地代増額請求時の注意点(2019.8現在)

ちょうど一年前に、大阪における家賃増額請求・地代増額請求時の注意点(2018.8現在)という記事を書き、大阪における地代・家賃増額請求の現状を概観させていただきました。

その後一年が経過し、特に需要>供給となっているオフィス家賃については、常識が変わってきたのでは?と思えるような大幅改定も見受けられるようになりました(⇒参照:大阪の家賃増額幅の常識が変化しつつある?)。

とはいうものの、家賃増額・地代増額案件に係わらせていただくと、『残念だなぁ…』と思うような請求等も多々ございます。

また、一部エリアの店舗賃料について、爆発的な賃料上昇があったことに起因して、オーナー様/テナント様の調整をつけようが無いような事案も出てきています。

今回は、かかる状況を踏まえて、令和元年8月時点での家賃増額請求・地代増額請求時の注意点についてまとめてみたいと思います。

残念な地代・家賃増額請求1.過度に紳士的な提案

民民の交渉の段階で、極めて紳士的な提案(要するに増額幅が小さい提案)を行われるオーナー様も見受けられます。

もちろん、借地人・借家人様との関係性を考えてのことだと思いますし、相手方からは喜ばれますので『悪い』とは言えません。

ただ、地代・家賃の増額は、民民交渉⇒調停⇒訴訟と進み、

  • 調停がお互いの妥協点を探るためのものであること
  • 訴訟も、和解への誘導がメインであり、そうなると調停での経過も勘案されること

から、民民交渉>調停>訴訟の順に増額幅が低減してしまうのが現実です。

この中で、民民交渉の段階で、『過度に紳士的な提案』(例えば大阪都心部のオフィス賃料で月坪500円程度の増額等)をしてしまいますと、調停の段階でも調整を行う余地が無くなってしまいます。

また、このような増額要求を前提に調停・訴訟が進んで、極めて小額な上げ幅(例えば月坪200円の増額等)で折り合いが付いてしまいますと、実態に見合わない改定であるのにもかかわらず、3年程度は増額請求をすることが難しくなります。

もちろん、過大な請求では折り合いをつけるのが難しくなるという部分もあるわけですが、家賃増額・地代増額の際には、上記のような構造も踏まえた上で、適正な賃料水準を提示することが重要です。

残念な地代・家賃増額請求2.増額の根拠が乱暴

昨今の状況からしますと、増額交渉の相手方(借地人・借家人)も、「ある程度上がっても仕方が無い」という発想はお持ちだと思います。

但し、増額請求の際の説明が不十分(特段の資料も無く手紙一枚で請求等)であることによって、その請求の仕方に反感を覚えて交渉が難航するという事案が多くみられます。

また、その理由付けが不相当なものである場合や論理性に欠ける場合、それによって借地人・借家人が不信感を持ってしまって交渉が進まなくなる場合も見受けられます。

増額の際には少なくとも、「増額も仕方が無い」と思わせるだけの資料を準備することをお勧めします。

残念な地代・家賃増額請求3.そもそも上がらない

これは前回も書かせて頂きましたが、改めて補足も含めて…。

マスコミ報道等や風評からは、上昇が著しく感じられる大阪の地価・賃料水準ですが、ザックリ言いますと大阪都心部の地価・オフィス賃料の水準は、地価で平成12年ごろ・オフィス賃料で平成20年ごろと同じ水準です。

地代増額・家賃増額の際には、『直近合意時点以降の事情変更』の立証が必要ですが、直近合意時点がこれらより前である場合には、相手方から「直近合意時点以降、地代・家賃は落ちているはずなので、むしろ減額では?」という主張がなされることも有りえます。

そうなると、調停・訴訟と進むにつれて旗色が悪くなりますので、増額請求をするには入念な検討が必要です。

しかし、正直この辺りの検討も無く増額請求をお考えになるオーナー様も多いのが現状のようで、我々としてはこういう状況で交渉を始められてしまい、後からご相談を受けても、「早めに手を引くように」等としかアドバイスが出来なくなります。

折り合いを付け様のない家賃増額請求

大阪都心部においては、心斎橋筋商店街周辺を筆頭に、異常な家賃上昇が生じているエリアがあります。

このようなエリアでは、理論値としての水準(店舗としての負担可能賃料等から求めた賃料水準)と、風評の中で飛びかう賃料水準(特定業種を前提にしないと採算が合わないことが多いです)に数倍の開きがある場合があります。

この中で、

  • 風評的な賃料水準をベースに、理想的な絵を思い描くオーナー様と
  • 当初契約賃料をベースに収支計画を描き、現実の店舗経営の中でそろばんを弾かざるを得ないテナント様

の間で、考え方に大きすぎる断絶があり、もはや折り合いを付けがたい案件が多数出てきています。

この種の案件の家賃増額時においては、「理想的な家賃増額で折り合いが付かないこともある」という現状認識のもとに、「この物件をどのようにしたいのか?」という根本的な部分に遡っての検討が必要です。

このような中で地代増額・家賃増額を行う場合には?

かかる状況の中で地代増額・家賃増額を行う場合においては、「上がっている」という感覚だけで行うのではなく、立地性・物件の特性(リニューアルの有無等も含む)・契約関係等を整理したうえで、

  • オーナー側にとって有利な状況・要因
  • テナント側にとって有利な状況・要因
  • 最終的な落とし所

を十分に意識した上での交渉が必須になります。

弊社で継続賃料にかかるご相談を頂いた場合は、『鑑定書を書くことありき』でご相談を承るのではなく、上記を踏まえてどのような交渉シナリオが一番効果的かを提示させていただいております。

地代増額・家賃増額を検討しているオーナー様は、是非事前にご相談いただいた上で、今の状況を最大限に活かした地代増額交渉・家賃増額交渉をしていただければと存じます。

⇒賃料増減額交渉のための鑑定評価等

 

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