オフィス賃貸市場
全体像
三鬼商事株式会社が毎月発表している「オフィスマーケットデータ」より、大阪ビジネスエリアの賃料・空室率の推移をグラフ化したのが下図となります。
空室率については令和2年5月から上昇基調となり・賃料については令和2年9月より下落推移となっています。
大阪の場合、東京に比べてテレワーク等の導入による大幅減床を行う(行える)会社は少ないように思えますが、増床の取りやめ・会議室等の減床・廃業や支店の廃止等による解約は出てきており、これが空室増加につながっているようです。
昨今の感染拡大の状況及び、2022年・2025年に2025年にオフィス床の大量供給が予定されていることも考えますと、今後の空室の増加・賃料水準の低下は避けられない状況かと思われます。
エリアごとの状況
同調査より、エリアごとの賃料・空室率を、コロナ前の令和1年11月と直近調査結果である令和2年11月を対比したものが下表です。
賃料については、下落に転じたのが9月頃であることから意外に下がっていなくて、対前年比でマイナスが出ているのは南森町地区と船場地区のみで、かつ微減に留まります。
空室率については、エリアごとに濃淡があり、ビル経営としての好況・不況の分水嶺になる5%に近付いている所・超えているが出てきている点は注目すべきです。
店舗賃貸市場
店舗賃料に関しては、オフィスのように詳細な調査が有りませんが、シービーアールイー株式会社が4半期に一度ジャパンリテールマーケットビューという形で、代表的な商業地の1階店舗賃料を発表しています。
梅田・心斎橋は、2019Q4~2020Q2の半期で△16.7%の大幅な下落になる一方、2020Q2~2020Q3では横ばいとなっています。
但し、この調査の対象となっているのは、
- 飲食ではなく物販と思われること
- 各エリアの中のプライム物件であること
- ごく少数の賃貸事例から導き出されて賃料であること
に留意すべきです。
居住用物件の賃料水準
賃料水準を示す指数はいくつかありますが、月次ベースで発表されているものとして、消費者物価指数(家賃)・全国賃貸管理ビジネス協会の全国家賃動向を取り上げます。
消費者物価指数(家賃)
消費者物価指数(家賃)に関しては、明確な下落トレンドの推移となっています。
全国家賃動向(大阪府)
こちらは大阪府全体の統計になりますが、前記の消費者物価指数とは異なり、以下の様にむしろ上昇傾向にあります。
実際の住宅家賃水準は?
その他の指標や、普段鑑定を行っている体感からすると、大阪都心部の住宅家賃については近時は「概ね横ばい」推移と思われます。
但し、
- 賃料上昇となる積極的材料は見出しがたいこと
- 今後の雇用の悪化等も考えられること
- 局地的に退去等の増加している地域も見受けられること
- 地方自治体が家賃の一部を最大9か月間肩代わりする『住居確保給付金』について、「9か月」が満了するケースが出てくること(R3.1よりR2年中の受付分に限り12ヶ月への延長有り)
等に鑑みれば、近い将来下落推移に移行するのは致し方ないものと予想されます。