大阪の投資用不動産市場の利回り序列の謎(2018年9月時点)

投資用不動産の売買時においては立地・建物の築年数・現行の空室率等と並んで利回り(年間の収入÷価格)が重視されます。

利回りは、「その物件の期待収益率」を表すものですが、これは「その物件のリスク」と裏表の関係にありますので、「高ければよい」というものではなく、人気の物件・収益が安定的な物件は低く、リスキーな物件は高くなる傾向が有ります。

尚、利回りにはいろんな種類が有るのですが、

  • プロが購入するような大型投資用不動産では、NOI利回り(空損控除後の経常収入から、経常支出を引いた収益に対する利回り)が、
  • 個人投資家層が購入するような小規模投資用不動産では、満室想定利回り(空損も諸費用を控除しない満室想定の収入に対する利回り)が、
  • 不動産鑑定評価では、NCF利回り(NOI利回りに、一時金運用益を加算し、資本的支出を控除した収益に対する利回り)が、

基準になります。

公表されている利回りは?

この中で、情報が開示されている利回りとしては、大型投資用物件のNOI利回りが挙げられます。

  • これは、J-Reitが物件を購入・売却した際のプレス発表の一部
  • 一般財団法人 日本不動産研究所・公益社団法人 大阪府不動産鑑定士協会が発表する投資家調査等

で観測可能です。

ちなみに、直近の大阪府不動産鑑定士協会による投資家調査(平成30年1月調査)では、大阪市内のレジデンス(一棟物マンション)で4.8%~5.0%付近に集中しています。

⇒ 大阪府エリア別不動産利回り調査

理論的な投資用不動産の利回り序列は?

上記の調査対象になっている大型投資用不動産に対して、

  • 個人投資家が購入するような小規模物件(立地も悪く、築年も古い場合が多い)
  • 投資用ワンルームマンション(空室率が満室か空室かの100%か0%かで、空室時にも管理費・修繕積立金が発生する。また、供給過剰で空き室も多い)

の利回りは、高くなってしかるべきです。

そもそも物件自体の収益安定性が異なりますし、購入者の資金調達能力(どれだけ安い金利で借りれるか?)を考えても、この種の物件の金利負担が大きくなるのは、明白ですので。

現実の不動産市場における利回り序列は?

しかし、現実の利回り序列を見ると、

  • 個人投資家が購入するような小規模物件
  • 投資用ワンルームマンション

の取引利回り(売買の際に実現された利回り)を大型投資用物件の利回りと比較すると(満室想定利回りをNOI利回りに直しての比較)、むしろ上記の様な小型物件の利回りの方が低くなることが多いのです。

特に新築ワンルームマンション等は、満室想定利回りで4.0%~4.5%という低水準であり、投資行為としては危険水域のレベルとなっています。

大阪の投資用不動産の利回り序列が狂っている理由は?

このようなアンバランスさが生じているのは、その需要者の属性によります。

購入者がJ-Reit等のファンドである場合は、純然たる投資目的で購入しますので、当該投資行為で破たんするような金額・利回りでの購入は行いません。

しかし、個人投資家等の場合、不動産投資に対する不知という部分も有るでしょうし、相続対策・将来の年金対策等の純然たる投資目的以外で購入する場合も有るからです。

このような中、鑑定はどうするのか?

このようないびつな状況の中ですが、不動産鑑定では「今売れる値段・今買える値段」を出すことになりますので、「あるがままのいびつな利回り」を使用して評価することになります。

ただ、投資用不動産を購入しようとしている方に対しては、やはりこのような現状はアンバランスな状態ですので、

  • このような状態を認識し、
  • 満室想定利回りだけでなく、空室・費用等控除後の利回りも検討し、
  • 賃料・空室率の今後の動向についても勘案の上

投資を行うべきか否かを検討する事をお勧めします。

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