不動産鑑定評価の試算価格・試算賃料は一致する/しない?

試算価格というのは、不動産鑑定評価の鑑定評価の中で、特定の方法によって導き出した『試算値』です。

鑑定評価では、いくつかの『試算値』たる試算価格・試算賃料を勘案して、鑑定評価額を導き出します。

この中で、試算価格/試算賃料が一致するのか?と言う点について、業界内で中期的な変動(?)が有りますので、整理してみたいと思います。

昔は一致しないのが当たり前だった

昔は、各試算価格・試算賃料は、「特定の視点で見た場合の価格・賃料を示すもの」という発想でした。

例えば、更地の評価について考えてみると。

  • 比準価格は、同種の取引事例はいくら位だから、という視点
  • 収益価格は、ここに賃貸物件を建てると想定して、家賃収入から考えてペイする土地の仕入れ値は?という視点

からの価格だという発想です。

この中で、皆が自用目的で土地を購入し、賃貸市場が成熟していない地域等であれば、比準価格>収益価格になってしかるべきです。

ですので、収益価格が比準価格の30%~40%程度しか出なくても、「そういうもんだから」という事で気にしませんでした。

ファンドバブル期以降の収益不動産市場の成熟で、貸家でものすごいバランスに

ただ、風向きが変わってきたのが、ファンドバブル期以降の収益不動産市場の成熟です。

昔は積算価格>収益価格が当たり前であり、市場においても積算価格も勘案されて取引されていた収益物件が、完全に収益目線で取引されるようになり、かつその価格がどんどんあがっていきました。

この中で、土地・建物の積み上げである積算価格と、収益価格のバランスが著しく崩れ、一時期は都心部の優良投資物件などでは、収益価格が積算価格の6倍などという状況になりました。

そんな中で、いくら何でも…という議論が湧き上がってきました。

試算価格は一致すべきという価値観

この中で、平成19年改正時であったと記憶しているのですが、鑑定評価基準の公式ガイドブックと言える「要説 不動産鑑定評価基準』(住宅新法社)の試算価格の調整の部分に、「試算価格(賃料)は、それぞれが独立して鑑定評価で求める価格等を指向しており、各手法は価格の三面性を反映した鑑定評価の3方式のいずれかの考え方を中心としているものの、理論的には他の方式の考え方も相互に反映されるべき性格のものである」として、

  • 試算価格・試算賃料は、特定の視点からアプローチした賃料ではない
  • よって試算価格・試算賃料は(一致はしないまでも)近づくべきもの

という価値観が導入されました。

これを機に、特に原価法において一体増価なる概念が積極的に導入されるようになりました。

平成26年改正で、継続賃料領域にも

そして、試算価格・試算賃料が一致すべきという発想が、ある種野放しになっていた継続賃料領域にも浸食してきました。

これも基準で明確に書かれている訳ではないのですが、『不動産鑑定評価に関する実務指針』において、手法によって現行賃料より上がったり下がったりするのが一般的であった継続賃料評価の試算賃料について「平仄を合わせるべき」(一致しなくても、上がる/下がるの方向性は一致させるべき)という記述が登場しました(これは業界内に、大きなショックを与えました)。

試算価格・試算賃料の一致/不一致問題についての私見

確かに、純粋理論的な見地からすると、「各手法の適用過程において、各価格形成要因をきっちりと反映させることで、試算価格・賃料は(一致はしないまでも)近づくはず」という主張は理解します。

ただ、手法の特性の中で、反映させやすい要因・反映させにくい要因が有るのも事実です。

また、素直に求めた試算価格のかい離の中に、その物件の真の姿が見える部分も有ると考えます(例えば、所謂三セク物件等で積算価格>>収益価格になる等)。

この中で、無理に近づけようとしてある種逆算的な補正を行う中で、『読み手に分かりにくい鑑定評価書』が出来てしまっているのではないかとの危惧を感じます。

勿論、この辺りは、評価主体の好み・主義主張の領域であるとは思いますが、私個人としては時代に逆行している感があるのは感じつつも、「逆算的な補正」は行わず、試算価格の調整の部分でかい離の生じている理由を説明するスタイルを好んで用いております。

 

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