価格と比較し賃料は遅くて粘る?賃料の遅効性・粘着性

昨今、大阪の都心部では土地価格の上昇等もあって、賃料増額交渉が盛んになってきています(こちらの記事もご参照ください。⇒ 大阪における家賃増額請求・地代増額請求時の注意点)

しかし、実際に訴訟レベルで賃料増額交渉を行うと、「思ったほど上がらない」という自体になることも多いのは、前述の記事でも書いたところですが、今回はこの原因の一つとなっている『賃料の遅効性・粘着性』についてまとめてみたいと思います。

尚、賃料の遅効性・粘着性については、「まとめてこういう性質」として一緒くたに語られることも多いのですが、厳密には遅効性・粘着性は対比する概念が異なります。

遅効性は「価格」に対して・粘着性は「新規賃料」に対して発想すべきものですので、ここでは厳密に論を進めます。

賃料の遅効性とは?

『賃料の遅効性』というのは、賃料は価格に対して一歩遅れて変化するという特性のことを言います。

これは実際に、市場において観測される傾向で、有名なところでは『バブル崩壊時に価格が急落していたにもかかわらず、賃料に関してはしばらくは上昇していた』というような気持ちの悪い現象が見られたそうです。

情報化が進んだ昨今では、『遅れ方の度合い』は変わってきているとは思いますが、それでも市況を見ていますと、『価格が上がり/下がりだしてしばらくしてから賃料も上がり/下がりだす』という現象は変わらず観測されます(昨今の大阪オフィス市場での価格・賃料推移など、典型的でしたね)。

この理由としては、価格の前提になる不動産売買は、「その時・その時の1回限り」のものですので、世の中の動きにドラスティックに変化するのに対して、賃料は継続性の有るものなので、「ついこの間契約した上の階の人」のことを考えると急に上げ下げしにくい、というような力学が働くためと考えられます。

賃料の粘着性とは?

賃料の粘着性というのは、継続賃料(賃料改定後の賃料)は、いきなり新規賃料(フツーに新たに貸す際の賃料)まで上がる/下がるものではなく、現行賃料と新規賃料の間で決まる(もっというと現行賃料に引きずられる)という性格のことを言います。

例えば賃料上昇期の大家さんの立場になると、「いま周辺では賃料が上がってきてて、今度入ってもらうテナントさんも坪20,000円で入ってもらうことになっている。だからこの区画の賃料を、坪15,000円⇒坪20,000に改定したい」と思うとします。

ただ、新しいテナントを入れるとすると、変なテナントが入って家賃滞納とかされるリスクがあるけれど、その区画のテナントさんはきっちり払ってくれている。また、テナントに出ていってもらって、次のテナントがすぐ入ればよいが、空室期間が長引くとかえってマイナスになる。

こんな中で、「一応満額を提示した上で、間を取って坪17,500円で妥結すればいいかな?」なんて気持ちになる…というのは、まあ多くの大家さんが思う所でしょう。

逆にテナントとしては、「今まで借りててちゃんと家賃も支払ってるのに、急にそんなことを言われても!」・「自分が出て空室が続いたら、逆に大家さん損でしょ!」と思って、「でもまあ、家賃が上がってきているのは事実だし、新規の水準より安めであれば、値上げは仕方ないか…間を取って坪17,500円で妥結すればいいかな?」なんて思うと。

このような構図の中で、この性質が具現化されていきます。

最近、この性格を嫌い、かつ自分の物件に自信のあるオーナーさんが「定期借家」制度を利用する例も増えてきました。

定期借家であれば、期間満了後は立退費用等の支出もなく出ていってくれますし、期間満了後に再契約を希望される場合も、あくまでも再契約となるので、「賃料の粘着性」に縛られない『新規賃料』での契約となるからです。

もちろん、賃料下落期になると、再契約しようとするテナントからは容赦ない賃料定時が行われますが…。

賃料の遅効性・粘着性の結果

この世な賃料の遅効性・粘着性の結果、

  • 「不動産価格が上がってる」って聞いているのに、『新規家賃』はそれほど上がっていなかった(遅効性)
  • 『継続家賃』になると、更に上がらない(粘着性)

のダブルパンチで、「せっかく調停⇒訴訟と進んだのに、ほとんど上がらなかった」というようなことも有り得ます。

賃料交渉(特に増額)はデリケートですので、実際に賃料交渉をする前に、しっかりと下準備をすることをお勧めします。

※弊社では、賃料交渉の下準備からお手伝いさせていただいております。詳細は以下の記事をご参照ください。

⇒ 賃料増減額交渉のための鑑定評価

 

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