継続賃料における共益費の考え方

建物賃貸借に当たっては、賃料の他に「共益費」も授受されるのが一般的です。

しかしこの共益費、賃料を考える中で結構難しいところがあります。

今回はこの点、まとめてみたいと思います。

共益費とは?

共益費は、『対象不動産の維持管理・運営において経常的に要する費用(電気・水道・ガス・地域冷暖房熱源等に要する費用を含む)のうち、共用部分に係るものとして賃借人との契約により徴収する収入』(鑑定評価基準各論第3章)ですが、もともと鑑定評価基準では、「収入・支出がいってこいの関係にあるもの」として終始項目から除外されていました。

しかし、現実の賃貸市場では「共益費込み」で意思決定されることが多く、また募集条件・契約書等でも「共益費込み」での記載が行われることも多くなってきました。

この中で平成19年の基準改正より、価格評価においては収入項目に加えられ、代わりにこれに対応する支出として「維持管理費」が新設されました。

各論3章の「DCF法における収支項目」の中でのみ記されており、総論7章では相変わらず枠外なのですが、各論3章の収支項目が現在の大方の鑑定士の共通認識で、第7章の記載は「死んでるのに放置されている」のが現状とご理解ください。

賃料鑑定の世界での共益費

しかし、賃料の世界では、「共益費はあくまでも別物」という考えかなが強いです。

鑑定評価基準総論7章にある以下の記述は、このスタンスを端的に示すものと言えます。

慣行上、建物及びその敷地の一部の賃貸借に当たって、水道光熱費、清掃・衛生費、冷暖房費等がいわゆる付加使用料、共益費等の名目で支払われる場合もあるが、これらのうちには実質的に賃料に相当する部分が含まれている場合があることに留意する必要がある。

そして、鑑定評価上の継続賃料評価は、

  • 継続中の宅地の賃貸借等の契約に基づく実際支払賃料を改定する場合
  • 契約上の条件又は使用目的が変更されることに伴い賃料を改定する場合

の2つの場合があると書かれていますが、前者に『実際支払賃料』と書いていることからも、共益費は対象外であるとするのが多数意見になっています。

しかし現実には…

とは言うものの、先の『共益費とは?』で書かせていただいたとおり、当事者の意思決定は「共益費込み」で行われることが大半で、契約等でも分別し難くなっています。

この中で、賃貸事例比較法(新規賃料を求める場合・継続賃料を求める場合とも)において、賃貸事例から共益費抜きの賃料を求めることは困難を極めます。

たとえ得られた資料に賃料・共益費が明記されていたとしても、前項で引用した基準中の「実質的に賃料に相当する部分」の補正を行うには事例不動産全体の収支の把握が必要ですので、現実的に不可能です。

更にそういうことを言い出すと、対象不動産の共益費の中に「実質的に賃料に相当する部分」があったらどうするんだ?なんて問題も出てきて、頭が混乱してきます。

継続賃料における共益費の取扱い(私見)

このような中での、継続賃料評価における共益費の取扱ですが、個人的には「共益費込みの継続賃料」を出すのが一番理にかなっていると思っています。

技術的な観点からも、破綻なく作業が行なえますし(もちろん、共益費込みで行うには、積算賃料導出で工夫は必要ですが、むしろそのほうが価格査定の際と違和感なく資産が出来ます)、当事者の視点にも適合的だからです。

ただ、ここは色々な考えのあるところで、私の所属する賃料改定.comメンバーの中でも少数説なのですが…。

 

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