定期借家にかかる諸問題と判例の状況(2018年9月時点)

平成12年に創設された定期借家ですが、時の経過の中で随分と活用が進んできており、近時の大阪圏では新築事務所ビル等でも活用される例が増えてきています。

そして、活用が増える中で問題点も見えてきて、この問題点も判例の蓄積である程度解消されてきているのが昨今の状況です。

今回はこの、定期借家権の問題点のうち、不動産鑑定評価と特に関係が深そうな部分について、備忘録を兼ねてまとめておきたいと思います。

定期借家権の期間延長は可能か?

定期借家物件について、「追加投資を行いたいけれども、投資回収の観点から現行契約期間では心もとない。よって期間を延長してほしい。」というような話はよくあります。

これに関しては、借地借家法第38条第1項は「契約の更新」は禁止するものの、「期間の延長」を禁止するものではないというのが通説的見解になっています。

判例等は特にないようですが、公益社団法人不動産流通推進センターの以下のページの記載が、根拠になっているようです。

⇒ 定期建物賃貸借契約の期中における契約期間の延長とその手続

貸主が終了通知を怠った場合等の法律関係

1年を超える定期借家の場合、貸主は期間満了の1年前から6か月前までの間に終了通知を行う必要があります。

この通知を当該期間終了後に行った場合について、東京地裁平成21 年3月19 日判決の中で、

  • 契約自体は期間満了により終了する
  • 賃貸人は、期間経過後に行った終了通知から6カ月を経過すれば、定期借家契約の終了を賃借人に主張することができるようになる

とされています。

そして、上記判例ではちょっと不明瞭であった契約終了後の法律関係については、東京地裁平成25 年1月22 日判決で、

  • 賃借借契約自体は期間満了により確定的に終了する
  • ただ契約終了に係る具体的な効果(明渡請求、明渡遅滞に係る約定損害金請求等)を賃借人に主張することができないにとどまる

と示されています。

「期間満了後に終了する」という部分に力点が置かれた解釈ですが、上記判例はいずれも終了期間経過後長期にわたって(旧)借家人の使用収益を放置していた事例では有りません。

数年間にわたって放置していた…等の場合には、黙示の賃貸借契約の成立が認定される可能性は否定できません。

契約期間終了後に賃貸人が賃料増額を申し出た場合、継続賃料になるのか?

上記の判例の趣旨(期間満了により契約は終了・あとは明け渡し等を対抗できないのみ)からすると、契約が終了している以上は、新規契約になる(=継続賃料にはならない)というのが素直な流れでしょう。

ただ、上記でも書いた通り、長期間にわたって放置して…と言う場合には微妙ですね。

どのように認定するかで結果が大きく変わる可能性はあるので、経過期間や交渉の状況等を、クライアント様から詳細に聴かせていただいた上での判断という事になるのでしょう。

尚、黙示の契約更新については東京地裁 平成27年2月24日判決 棄却の中で、

  • 定期借家契約につき、黙示の契約更新が行われると普通借家契約として更新される、
  • 普通借家契約であったものを定期借家契約として再契約するためには、定期借家契約書の締結及び法38条書面の交付のみでは足りず、普通借家契約を更新ではなく終了させ、借主に対し定期借家契約が期間満了時には更新がない点で不利益な内容である旨の説明をし、認識させる必要がある

とされています(本件は期間経過後も放置していたのではなく、一定条件を家主が提示し、この条件通りにテナントが賃料を払い続けた事案です)。

ですので継続賃料として評価するのなら「定期借家として成立したものの、普通借家契約として更新された契約の継続賃料」という事になるのでしょう。

この場合、直近合意時点がまた悩ましいですが、普通借に変わるというのはかなり大きいので、個人的には「更新時」にするべきかな?と思います(あくまでも私見ですが…)。

この記事のまとめ

この記事では、定期借家について、

  • 更新は出来ないけれど延長は可能であること
  • 終了通知を怠った場合、期間満了で契約は終了する事
  • 送付すべき期間経過後に終了通知を送付した場合、その6か月後に明け渡しを請求できること
  • 上記6か月間の法律関係は、契約終了に係る具体的な効果(明渡請求、明渡遅滞に係る約定損害金請求等)を賃借人に主張することができないに留まること
  • 契約が黙示で更新される場合は、普通借家としての更新になること

等について、判例を交えてまとめてみました。

ただ、期間満了後の賃料増額請求について、新規契約とするのか継続賃料とするのか、継続賃料とした場合の直近合意時点がどこになるのかは悩ましいですね。

この辺りは、更なる判例の蓄積を待つ必要が有るのでしょう。

 

コメントを残す