一時金と鑑定評価額

貸家及びその敷地(賃貸マンションとかテナントビルとか)の運営に当たっては、敷金・礼金・保証金等の一時金が発生します。

これを価格評価上における収益還元法適用上どのように扱うかということと、売買・決済の際に預かり一時金がどのように取り扱われ、鑑定評価額とどのような関係になるのかは、ちょっとややこしい部分なので、この記事でまとめてみました。

一時金の種類と鑑定評価上の取扱い

一時金には、敷金・礼金・保証金等いろいろなものが有り、同じ名前でも地域によって呼び方が違ったりするのですが、鑑定評価では、

  • 預り金的性格の一時金:入居時に支払って退去時に返してもらえる一時金
  • 賃料の前払い的性格の一時金:入居時・更新時に支払い、返してもらえない一時金

に分類して処理を行います。

預り金的性格の一時金に関しては、オーナーはそのお金を持って入るものの、テナントが「出る」と言われたら即時変化役する必要が有ります。

この中で鑑定評価では、「このお金は対象不動産の収支とは別立てで管理して、いつでも返却できるような形で保持・運用するのが一般的だ」と考えます。

そして、流動性を保持した形での運用(ある程度普通預金にしておいて、一部を短期かつ確実な形で運用)を想定して、このブログを書いている2018年10月時点では、運用利回り1%程度での運用を想定し、これを雑収入的に収支に加えます(具体にはNOIを計算した後に、この収入を加えて、資本的支出を引いてNCFを導出します)。

これに対して、賃料の前払い的性格の一時金は、入居もしくは更新のタイミングの度に入ってきて返さなくて良い、オーナーさんにとっての「ボーナス」のようなものですので平均的な収入額を、不動産収支上の「その他収入」で収支計上します(先程の預り金的性格の一時金がNOI計算の後に処理するのに対し、こちらはNOI計算の中で処理を行います)。

売買・決済時の預かり一時金の取扱い

前オーナーが受け取った「賃料の前払い的性格の一時金」は、前オーナーが今までに受け取った家賃と同様に前オーナーのものです。

しかし、前オーナーが受け取った「預り金的性格の一時金」は、売買時に居付きのテナントの分は、これを購入した後オーナーがテナント退去時にテナントに返還する必要が有ります。

つまり、収益物件を購入すると、その購入時点で有している「預り金返済債務」を次のオーナーが負担することになります。

実際の売買に当たっては、この債務について、以下の2つの方法が有ります。

  • 東京方式:物件の売買価格から、預り金返済債務を相殺して決済する(物件価格が1億で、預り金返済債務が2千万円なら8千万円で決済する)
  • 大阪方式:預り金返済債務は「持ち回り」と考え、物件価格で決済する(物件価格が1億で、預り金返済債務が2千万円でも、1億円で決済する)

尚、最近は大阪であっても「東京方式」の決済が多く見られるようになってきています。

預り金返済債務と鑑定評価額の関係性

素直に考えると、東京方式的に、「物件価格が1億で、預り金返済債務が2千万円なら8千万円」で、この8千万円が鑑定評価額になるような気もします。

ただ、前述のように市場には異なる決済方式(大阪方式)もありますし、税務会計処理等においては、債務は債務として別立てで処理を行っていきます。

ですので、物件価格である1億円を鑑定評価額とし、預り金返済債務が存する場合には、鑑定評価額を表記した部分の欄外等に「通常の不動産取引に当たっては、上記評価額から買主に承継される一時金返還債務額を控除した額が決済価額として授受される」というような文言を注記することになっています。

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