継続賃料評価における預り金的一時金の運用利回りについて

継続賃料評価においては、最終的に支払賃料を求める依頼であったとしても、一度支払賃料を実質賃料に直してから作業を行って行きます。

この中で、直近合意時点と、価格時点の期間が大きく空いていなければ良いのですが、

  • この期間が大きく空いている場合
  • 一時金の額が大きい場合

には、運用利回りをどのようにすべきか?という問題が生じます。

鑑定士的には、ついつい価格時点の利回りで単純に計算したくなるわけですが、歴史的な低金利水準が続いている昨今の状況に対して、20年も遡れば金利水準は全く違うもので、これを如何に取り扱うかで実質賃料が大きく変わってくるからです。

一時金に関しては、預り金的性格の一時金と、賃料の前払い的性格の一時金が有りますが、両者は性格が異なりますので、今回は前者にスポットを当てて考えてみたいと思います。

参考になる判例

この点、私の知る限りにおいて、実務的な指針等は出ていないと思うのですが、この点を考えるにあたって非常に参考になる判例が出ています。

東京地方裁判所判決 平成8年(ワ)第2600号、平成8年(ワ)第11522号の建物賃料改定等請求事件に係る判決です。

この判例では、自動改定特約の有効性が争われたものでしたが、その過程で、

  • 一定期間猶予の後、分割返済する保証金の鑑定評価上の取り扱い
  • 一時金の運用益

について裁判所の判断が示されています。

折角ですので、後者についての原文を引用しますと以下の通りとなります。

また、本件鑑定は運用利回りを賃貸借契約期間中(二〇年間) 一律七パーセントとして計算しているが、長期プライムレートは昭和六〇年から平成四年までは年平均六・五八パーセントであったものの、平成五年から平成九年までは年平均約三・六〇パーセントまで低下しているのであって、いわゆるバブル経済のころとそれ以降で一律に計算するというのは現実離れしているといわざるを得ない。

右長期プライムレート等の数値の変動を考慮すれば、一時金の運用利回りを昭和六〇年から平成四年までは年七・五パーセント、平成五年以降は年四・五パーセントとして計算するのが相当である。

以上のように本判例では、時代の趨勢に合わせて運用利回りを変更すべき、という立場を取っています。

リアリティをもって想像してみると…

実質賃料は、「貸主に帰属する全経済的利益」ですので、市中金利の利回りの低下による運用益の低下は、当然利益を害するものです。

10年国債の応募者利回りの長期推移を見ますと、私が生まれた1970年の利回り(東証上場国債10年物最長期利回りの末値)は7.07%でした。

このような数字を具体に見ると、短絡的に価格時点(というか現時点)で一般的な運用利回りでもって全期間の運用利回りを計算するというのは、相当に危険な事ということになります。

計算過程では気持ちの悪い事態も…

このような立場に立ちますと、

  • 直近合意時の支払賃料100万円/年
  • 直近合意時の運用利回り(高い)に基づく運用益5万円/年
  • 以上より実際実質賃料は105万円/年
  • 各種手法適用の結果、鑑定評価額(実質賃料)は103万円/年(2万円の下落
  • 価格時点の運用利回り(低い)に基づく運用益1万円/年
  • これをベースに計算した鑑定評価額(支払賃料)は102万円/年(2万円の上昇

とういう、なんとなく座りの悪い結果が生じることもあるでしょう。

とはいうものの、上記の考察を考えますと…運用益の部分に係る考え方をしっかりと評価書の中で記述することで、関係当事者にも納得していただくしかないのでしょうね。

 

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