賃料増減額交渉において「従前安すぎた/高すぎた」は何処まで主張しうるのか?

平成26年11月施行の不動産鑑定評価基準の改正によって、鑑定評価における継続賃料の考え方が大きく変わりました。

従前、不動産鑑定業界では、「相場賃料と現行賃料との開差は解消されるべき」という価値観が、(少なくとも私の周りでは)支配的だったわけですが、上記改正によって基準等では私的自治・契約自由の原則がより強調されて、「当初契約が安すぎた等は賃料増減額改定で解消するべきものではない。賃料増減額交渉で解消すべきは、直近合意以降の事情変更によって生じた不具合が中心になる。」というスタンスになったと読むのが素直です。

良い・悪いは別として、学説や最高裁の見解に大きく歩み寄ったものであり、これによって「訴訟」という場については、「従前安すぎた/高すぎた」で争っても基本的に(特殊事情がない限り)勝ち目がない世界となったと認識すべきでしょう。

尚、これは客観的な『場の分析』であって、納得できようが出来まいが明確な事実です。

ここで「この価値観に納得できない」と言って、自分の価値観を主張し続ける方も多いわけですが、個人的には『戦う土俵のルールと性格』を理解したうえで、次策を考えるのが専門家として有るべきスタンスだと思っています。

とは言うものの、訴訟に至る前の民-民の交渉においては、『直近合意時点以降の事情変更』とか『諸般の事情』といった、法律的な発想での議論が行われず、現行賃料と市場賃料の1/2を目安に継続賃料が決定される現実もあります。

また、身の回りの方とこの手の話をする中で、プレイヤーサイド(宅建業者・不動産鑑定士・弁護士等)においては、未だ従前の価値観である「相場賃料と現行賃料との開差は解消されるべき」が支配的なようにも見えました。

とすると、訴訟の現場はともかく、調停レベルまででは、未だ「従前安すぎた/高すぎた」の主張も有効ではないか?という仮説が生まれてきました。

そこで、この仮説を検証するために、フェイスブックのアンケート機能を利用して、プレイヤーサイドの継続賃料に関する感覚をリサーチしてみました。

アンケートの対象者

アンケートの対象者は、

  • 不動産関係のご職業(鑑定士・宅建士等)の方々
  • 法律関係のご職業(弁護士・司法書士等)の方々

として、友人・知人にお願いすると共に「拡散」もお願いしました。

最終的には前者につき72票・後者につき19票の有効回答を得ることが出来ました。

アンケートの内容

以下の質問に対して、2択で回答いただきました。

アンケートの質問

本人(地主)が、当時良く調べなかったせいで締結した「激安」の借地契約が有るとします。周辺相場から比べると、明確に安くて、半額程度の水準です。

ただ、地価やら固定資産税評価額は、締結当時(10年ほど前)と比べて上っている訳ではなく、ほぼほぼ横ばいです。また、激安の地代設定は、もっぱら地主さんの不勉強で、その地主さんが代替わりした等もありません。

こういう時の賃料改定というのは、どちらのベクトルに進むのが素直だと思いますか?

尚、法律関係のご職業の方向けのアンケートに関しては、「法律論」のお話になって欲しくはなかったので、「日本の法体系が…等でなく、民民交渉・調停等での落としどころも含めたご自身の感覚としてお答え頂きたいです。」との文言を付け加えました。

アンケートの回答肢

  • 激安の地代は解消されるべき(上がる方向)。
  • 地価や公租公課が横ばいである以上横ばい。

アンケートの結果

上がる方向 横ばい
不動産関係対象(72票) 68% 32%
法律関係対象(19票) 63% 37%

アンケート結果をまとめると上記の通りとなりました。

  • 上がる方向(=「激安の地代は解消されるべき」という従前価値観)が強いこと
  • この傾向が弁護士等の法律関係の方々の間でも過半を超えたこと

が当初予想と異なり意外でした。

当該結果による私的考察

あくまでも私の身の回りの少数の方を対象にしたアンケートですので、これが日本の継続賃料市場全体の様相を適切に反映しているとはいいがたい部分があります。

ただ、プレイヤーサイドの肌感覚が『判例・学説にベタベタによっているわけではない』点については、これが実態と言ってよいでしょう。

であれば、「訴訟になると価値観は変わる」事を前提にしたうえで、調停のレベルまでにおいては従前価値観を主張していくのも作戦としては有りではないか?という帰結に到達しました。

もちろん、「ヒット&アウェイ」・「引き際を見極めて」という姿勢は必須になりますが。

尚、今回のコラムは、『公正な立場から適正な継続賃料の有りどころを探す』という不動産鑑定士の立場を離れ、賃料増額・減額コンサル的立場で話を展開してたものである点、ご承知おきください。

追記)

アンケートにご協力いただいた皆様・更に拡散いただいた皆様、本当に有難うございました。

正直、まだ詰めきれていない部分もありますが、これをもちまして、とりあえずの総括とさせていただきたいと存じます。

 

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