差額配分法における実際実質賃料と直近合意賃料

平成26年11月施行の不動産鑑定評価基準の改正によって、継続賃料評価において不明確であった「現行賃料を定めた時点」が「直近合意時点」という言葉に改められるとともに、「直近合意時点以降の事情変更」のウエイトが大きく高まりました。

この中で継続賃料の手法を適用する際には、直近合意時点における賃料(以下、「直近合意賃料」とします)をベースに行うのが素直で、実際に利回り法・スライド法は鑑定評価基準においてもそのような書き方になっています。

利回り法は、基礎価格に継続賃料利回りを乗じて得た額に必要諸経費等を加算して試算賃料を求める手法である。…継続賃料利回りは、直近合意時点における基礎価格に対する純賃料の割合を踏まえ…

スライド法は、直近合意時点における純賃料に変動率を乗じて得た額に価格時点における必要諸経費等を加算して試算賃料を求める手法である。

これに対し、差額配分法における記述は、以下のとおり「実際実質賃料または実際支払賃料」となっています。

差額配分法は、対象不動産の経済価値に即応した適正な実質賃料又は支払賃料と実際実質賃料又は実際支払賃料との間に発生している差額について、契約の内容、契約締結の経緯等を総合的に勘案して、当該差額のうち賃貸人等に帰属する部分を適切に判定して得た額を実際実質賃料又は実際支払賃料に加減して試算賃料を求める手法である。

ふわっと考えますと、「実際実質賃料・実際支払賃料は直近合意賃料と同じだから問題ないんじゃないか?」と思えますが、実はこれが異なる場合が有ります。

実際実質賃料と直近合意賃料が異なる場合

1.自動改定特約が付されている場合

賃料に自動改定特約が付されている場合、判例の考え方では自動改定特約によって行われた改定は、その時点の合意による改定とはみなされません。

その結果、直近合意とみなされるようなリアルな合意改定の後に、自動改定特約によって賃料改定が行われると、

  • 直近合意賃料=リアルな合意改定による賃料
  • 実際実質賃料=自動改定特約により改定された賃料

となって差異が生じます。

2.礼金の償却期間との関係

実際実質賃料は、

  • 実際支払い賃料
  • 預り金的性格を有する一時金の運用益
  • 賃料の前払的性格を有する一時金の運用益及び償却額

を加算して求めることになるのですが、賃料の前払い的性格を有する一時金については一定の期間を設定して償却額を計上することになります。

この中で、

  • 直近合意時点=償却期間内
  • 価格時点=償却期間の後

となった場合には、直近合意賃料には一時金の償却額を含まれ、実際実質賃料にはこれが含まれませんので、直近合意賃料≠実際実質賃料になります。

3.一時金の運用利回りとの関係

前記の通り、一時金については運用益・償却額を計上することになりますが、これは特定の運用利回りでもって計算を行うことになります。

この中で、直近合意時点と価格時点の間が長期にわたる場合には、想定される運用利回りが異なってくる場合も有ります。

※これについては、過去記事継続賃料評価における預り金的一時金の運用利回りについてもご参照下さい。

想定される運用利回りが異なれば、運用益・償却額も変化しますので、直近合意賃料≠実際実質賃料となります。

実際実質賃料と直近合意賃料が異なる場合の取り扱い

実際実質賃料と直近合意賃料が異なる場合ですが、現在明確な指針は出ておらず、鑑定士の中でも意見が分かれているのが現状です。

個人的には、

  • 現行基準における継続賃料評価の枠組み
  • スライド法・利回り法との整合性

の観点から、「実際実質賃料」=「直近合意賃料」と読み替えて評価を行う方がベターであると考えていますが、混乱が生じうる部分ですので、基準改正等で概念を明確化することが望まれる部分です。

 

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