計算結果を元に鑑定評価額を決定する(第8章)

3週間でザックリ分かる不動産鑑定理論基礎講座も2週目第4日目です。

今回は、試算価格の調整と鑑定評価額の決定についての、具体的なイメージについて書いてみたいと思います。

大前提~試算価格等の調整は多段階に渡る作業

まず、基準や教科書等を見ているだけではなかなか見えてこない大前提なのですが、試算価格の調整等というのは、受験生の方が『演習』でやるようにウエイト付けをするだけのものでは無く、何段階かに分けて行われる作業になります。

また、そこで出てくる試算価格も、何度も見直し修正をかけていくものになります。

もちろんこれだけでは分からないと思いますので、以降順を追って説明していきます。

第1段階:まずは素直に試算価格を出してみる

例えば『貸家およびその敷地』を積算・収益のみで評価することを前提に考えます。

基準では色々うるさい事(各試算価格に共通する要因の取り扱いの整合性とか)書いてますが、たたき台なりが無いと前に進めないのが実際の所です。

ですので、まずは、たたき台的に、とにかく素直に(開差とか考えずに)積算価格・収益価格を出してみる事から始めます。

便宜上、ここで出した積算価格を『積算価格ver1』・『収益価格ver1』とします。

第2段階:実はここで『試算価格の再吟味』

『積算価格ver1』・『収益価格ver1』をじっくり眺めていくと、

  • あ、収益で一生懸命考えた高い空室率の取り扱いって、積算で考えてなかったな~とか、
  • 積算の土地価格出すとき、事例がやたら高かったけど、公示が低すぎるのかも?とか、

色んなことが思い浮かんでくると思います。

この「思い浮かんだこと」は、試算価格にフィードバックさせるべきもので、これをする手掛かりにするためにまとめたものが、『試算価格の再吟味』として書かれた基準の以下の内容になります。

1.資料の選択、検討及び活用の適否
2.不動産の価格に関する諸原則の当該案件に即応した活用の適否
3.一般的要因の分析並びに地域分析及び個別分析の適否
4.各手法の適用において行った各種補正、修正等に係る判断の適否
5.各手法に共通する価格形成要因に係る判断の整合性
6.単価と総額との関連の適否

ちょっと混乱しそうなのでまとめますと、

  • たたき台である『積算価格ver1』・『収益価格ver1』をじっくり眺めて、
  • 例の6項目をヒントに色々再検討してみて
  • それを試算過程・試算価格にフィードバックして『積算価格ver2』・『収益価格ver2』を作る行為

が、『試算価格の再吟味』の実質的な内容になるのです。

第3段階:『積算価格ver2』・『収益価格ver2』に磨きをかける

上記で作った『積算価格ver2』・『収益価格ver2』ですが、まだ開差が大きかったり、しっくりこない(腑に落ちない)ところが有ったりする場合も有るでしょう。

このうち、開差の部分については、出来るだけ合わしにかかって『○○価格ver3』を作る派の方と、『開差は物件の性格の表れ!』と捉えてあまり気にしない人がいます(私は後者です)。ここは実務をやりだしてから悩んでください。

これについて深堀してみたい方は、弊社で作成したブログ記事、不動産鑑定評価の試算価格・試算賃料は一致する/しない?をご一読ください。

ただ、しっくりこない部分については、何度も振り返り、場合によっては現地もう一度見に言ったり、再度調べ物をしたりして、しっくりくるまで磨き上げてください。

で、磨きあがった『積算価格ver2.x』・『収益価格ver2.x』が、所謂調整の段階に行く試算価格になります。

※基準で言うとここまでが再吟味ですが、より実務的なイメージを持っていただくために、敢えてこの段階を入れました。

第4段階:いよいよイメージ通りの『調整』=説得力にかかる判断

磨きあがった『積算価格ver2.x』・『収益価格ver2.x』を使って、いよいよ『調整』をかけていきます。これが基準でいう所の『説得力にかかる判断』になります。

ちょっと乱暴な言い方をすると、各試算価格にウエイト付けを行って、最終の鑑定評価額を決めてしまう直前まで行くところがこのパートになります。

ここでは価格形成過程への適合性と、試算価格の信頼性の2つの視点が必要になります(基準の以下の部分です)。

1.対象不動産に係る地域分析及び個別分析の結果と各手法との適合性
2.各手法の適用において採用した資料の特性及び限界からくる相対的信頼性

価格形成過程への適合性

まず最初に考えるべきことが、その物件の価格形成過程と、各手法との適合性です。

これは、前記事:鑑定士が価格を出す際までの大まかな流れと、ちょっと意外な考え方の2段落目である『not「職業専門家」の視点but「購入者」の視点で考える』を読んでいただけると、腑に落ちると思います。

今回は収益物件たる『貸家及びその敷地』の評価ですので、収益価格で決まり!みたいな感じで良さそうです。

試算価格の信頼性

とはいうものの、今回自分が出した収益価格について、資料収集がどうにもならなかった!なんていう場合は、ちょっと具合悪いですよね。

磨き上げた『収益価格ver2.x』とはいえ、資料収集が十分に出来なかった場合には、どうしても信頼性に限界が生じてしまいます。

また、手法自体の特性として信頼に劣りがちな手法も有ります(想定項目の多い開発法等)。

適正にウエイト付けを行うには、以上についてもしっかり考えておくことが必要になります。

そして鑑定評価額の決定

以上の過程で、もう鑑定評価額は決まっている訳ですが、ここで一息ついて「という訳で鑑定評価額はこれで!」と書く部分が鑑定評価額の決定になります。

実際上、鑑定評価書を書く際には、『試算価格の調整と鑑定評価額の決定』と一つの項目で書くのであまり区切りを意識する必要はないのですが。

お疲れさまでした!

第2週目の第4日目、お疲れさまでした!

試算価格の調整は、私自身勉強時代と実務でかなりイメージの違いを感じた点です。

これでいくらかでも頭を整理して頂けると、私としても嬉しいです。

尚、ほぼ同じテーマについてもっと知りたい方は、弊社が弁護士さん向けに書いた記事である試算価格の調整という謎の行為を解明という記事を斜め読みして頂くのも良いかと思います。こちらはより実務的になりますが。

今回の内容に質問等のある方は、k-usui☆usui-rea.com(☆を@に変えてください)までメールしていただけましたら、概ね1週間程度で回答するよう努力します。

尚、メールを頂く際には、『不動産鑑定理論基礎講座本編』を読んだ旨・ご自身のお名前は必ずご記入くださいね。

それでは引き続き、どうぞよろしくお願いします。

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