こんな考え方をもとに計算を行う(第7章)

1か月でザックリ分かる不動産鑑定理論基礎講座、2週目第3日目です。

今回は鑑定評価基準学習の山場ともいえる総論第7章(計算方法)についてです。

本題に入る前に、まずは第7章の全体像と、学習のポイントについてまとめておきます。

第7章の全体像と学習のポイント

第7章は大きく分けて以下の4部構成になっています。

  1. 前提としての価格の3面性の話
  2. 価格を求める計算方法(3つ)の話
  3. 賃料の話をするための前振り
  4. 賃料を求める計算方法の話

まあ、もちろん最終的には全部理解する必要が有るわけですが、正直、賃料の話と言うのは、価格の議論が下敷きになっていますので、ある程度価格の理解が進んでからでないと分かりません。

また、前提としての価格の三面性の話も、平成15年改正以降は重みを失った部分が有ります(昔は重たい話が有ったんですが、今は、「へ~、3種類の見方が有るのね~」位でOKです)。

ですので、学習初期においては、とにかく『2.価格を求める計算方法』に思いっきりフォーカスしていくのがお勧めです。

価格を求める計算方法(3つ)のイメージ

それではいよいよ、価格を求める計算方法(3つ)のイメージを解説させていただきます。

ここでの学習のコツですが、それぞれの方法ごとに、得意なジャンル・苦手なジャンル(ここでいうジャンルは、2章の『類型』です。とりあえずスルーでOKです)があります。

理解していく際は、そのジャンル(類型)をイメージするとスムーズです。

1.良く似たのを選んできて補正する『取引事例比較法』(比準価格)

買い物する際には、いくつかの候補商品を見比べて、「う~ん…」て悩んだうえで、「やっぱりこれ!」って感じで決めますよね。

この発想を使って、価格を出そうというのが、取引事例比較法です。考え方としては分かりやすいですよね!

この計算方法は、『更地』(建物の建っていない土地)で良く使われるので、『更地』をモデルケースにイメージを作ると分かりやすいです。

上記のイメージをそのままスライドすると、「更地を買おう!」と思ってるときに、近くの良く似た更地を集めてきて、「こっちは2,000万円で手ごろだけど小さいなぁ…あっちは3,000万円で高いけど大きいし駅から近い…でも…2,500万円でそこそこの大きさのこれにしよう!」ってイメージですね。

基本これなんですが、以下の2点の補正が入ります。

(1)集めるのは取引事例

集めるのは「売り物(募集事例)」ではなく、「実際に売買された事例(取引事例)」になります。

募集事例から交渉が入って最終価格が決まるので、最終価格の事例を集めた方が、求める価格の精度が上がるからです。

(2)取引事例の価格を補正して、求めたい更地の価格を導出

上記のイメージでは、「自分の好きなものを選ぶ」ことは出来ても、求めたい更地の価格は計算できません。

ですので、取引事例を補正(駅から遠いから5%マイナスetc)することで、「この取引事例が3,000万円なら、求めたい更地は2,500万円」というのを作って行きます。

2.土地がいくらで、建物は新築ならいくら。でも中古だから…と考える『原価法』(積算価格)

中古住宅を買う際など、この辺土地がいくらで、建物は古いから0円として…なんて考えますよね。

あるいは、会社の簿価計上(土地は取得費・建物は建築費から減価償却)・固定資産税の評価方法とかもこのような発想です。

このように、

  • 土地がいくら・建物を新築するのにいくら(これを再調達原価といいます)
  • 建物が中古なので、価値が落ちている分いくら

と考える方法を、原価法といいます。

この計算方法は、冒頭でも提示させていただいたように「中古の戸建住宅」で使いやすいので、まずはこれをベースにイメージを作ってください。

上記の説明だと「なぜ原価??」みたいに思うと思いますが、戸建開発業者さんが売れ残り物件捌く際に「この値段で土地を仕入れて、こんだけかけて建物建てたのに、なかなか決まらなくて1年半経ってしまって、もう新築価格では売られへんやんけ!!」みたいな状況をイメージしてみてください。

戸建販売業者さんからすると、土地仕入れ価格も、建物建設費も「原価」でしょ!!

3.家賃が○○円だから△△円!って考える収益還元法

収益還元法は、一棟のアパート・一棟賃貸マンションや、事務所ビルの評価で活躍する方法で、家賃が○○円だから△△円!っていう発想で、価格を計算する方法です。

これ非常に理解しづらいのですが…あなたが今、一棟アパート(うすい荘)を購入しようと思っていると想定して、じっくり解説していきます。

「うすい荘」を買うとどうなる?

あなたが「うすい荘」を購入すると、「うすい荘」は月々の家賃をあなたにもたらしてくれます。

そして、5年後くらいに売却したとすると、あなたの手元にはその売却益が入ってきます。

これは見方を変えると、(擬人化した)「うすい荘」君にお金を貸して、月賦で返してもらったうえで、5年後に残債一括返済をしてもらうのと同視できます。

でも、なかなか困った「うすい荘」君です

ただ、お金を貸す相手としての「うすい荘」君は、そんなにエエ奴ではありません。

  • まず、自分で考えられませんから、あなたが返済計画を考えてあげないといけません。
  • また、その返済計画がうまく行くように、お金を掛けたり、手間を掛けたりしないといけません。
  • しかも、下手すると火事で燃えたりして…「ごめんね」で終わってしまうことも有ります。

こんな「うすい荘」君に、5千万円貸して(5千万円で買って)、計画上の返済金合計が5千万円だったらどうですか?…そんなアホな事はしませんよね。

でも、5千万円貸して(5千万円で買って)、計画上の返済金合計が8千万円だったらどうですか?…ちょっとエエかな?って思いますよね!

ただ、不動産の場合、絶対金額だけではこの投資が良いかどうか分からないのと、順番的に、

  • まずは相手方の売り出し希望額を見たうえで、
  • まずあなたが「うすい荘」君の返済計画を立ててあげて、
  • 自分ならいくらまで出せるか?を考える

というプロセスを踏む必要が出てきます。

この中で有効になるのが、「うすい荘」君から適正な利息を取ろう!という発想です。

そしてこの利息が、不動産投資でいう所の「利回り」に対応するものになります。

利息を踏まえて、どうやって価格を決める?

これがちょっとややこしいんで、順を追ってい行きますね。

(1)まずお金の入り・出を精査し、返済計画に落とし込む

まず、あなたが「こんなもんなら大丈夫かな?」って思う「うすい荘」君の返済計画を考えます。

今の家賃や空室率、今後の修繕見込みなんかも勘案した結果、下図の通りだったとします(家賃を貰うには経費も必要なので、これも引くの忘れないでくださいね!)。

※家賃から経費を引いた各年の「純益」と「売却額」が返済予定額になります。

(2)~(3)各年の返済金に対応する貸付金を取りあえず当てて、欲しい利回りを決める。

次に、上記で定めた各年の返済予定額に対応する貸出金を、とりあえず(A1~A5)と置きます。

そして欲しい利回りを設定します(ここでは、ちょっと頼んない物件なので8%としました)。

(4)5年目だとA5を8%の複利で運用した結果が4,400万円になるように式を組む

次に、各年に対応する貸付金を複利運用した結果が、当該年度の返済金になるような式を組みます。

例えば5年目を例にとると、以下のようになります。

それを表にするとこんな感じになります。

※尚、A1~A5は、各々1年目~5年目に対応させているだけで、貸付(購入代金の支払い)は一括で行います。

(5)これを、A1~A5について解いて合計!

例えば先ほどの5年目の式を、 A5について解くと、以下のようになります。

これは、2,995万円を8%で5年間複利運用すれば4,400万円になることを示すもので、言い換えるとこの不動産から帰ってくる5年後の4,400万円は、今の価値にすると2,995万円になる(5年間使えないですし、リスクが有りますからね)ということになります。

尚、このように、将来の価値を今の価値に直すことを『現在価値に割り引く』と言います。

同様にA1~A5を解いたものを表にすると以下のようになります。

これは、

  • 1年目対応の370万を1年間8%で複利運用すると、400万になり、
  • 2年目対応の343万を2年間8%で複利運用すると、400万になり、
  • ….
  • 5年目対応の2995万を5年間複利運用すると、4400万になる

という事を示します。

もう一歩進めますと、

  • これらの合計額である4,319万円を「うすい荘」君に貸し付けて(4,319万円で「うすい荘」を購入し)、
  • 「うすい荘」君が思った通りに返済してくれれば(当初目論んだとおりに収支が回れば)、

あなたの貸し付けた4,319万円に8%の利子が付いてきたのと同じになる(あなたの投資した4,319万円は8%の運用益を得た)という事です。

ここで出た4,319万円がどういう意味を持つの?

上記のプロセスで、何やらフワッとした数字が出たわけですが、この意味を考えてみましょう。

(1)実際の売買の際

実際の購入に当たっては、売り希望価格が先行します。

この中で、「売り希望価格」よりもこの数字が低ければ、「売り希望価格」ではあなたの期待する8%の利回りが取れないという事になります。

ですので、その数字になるように交渉してみるとか、「売り希望価格」だと何%回るかも検証して、もうちょっと低い利回り(=高い価格)で我慢するか…というような事を考えます。

逆に「売り希望価格」よりもこの数字が高ければ、8%の確保は出来そうなので、そのまま話を進めるなり、一応ちょっとだけ値切ってみて更なるマージンを確保するなり…というようなことになるでしょう。

要するに、この出てきた数字が投資を行うか否かの判断根拠になるという事です。

(2)不動産鑑定の場合

取引事例比較法のところでのお話とリンクしますが、我々は上記の数字で投資判断を行えばよいのではなく、価格を決定する必要が有ります。

ですので、上記のような、

  • 今後の収支予測(上記では返済計画と言ってましたが…)
  • 期待する利回り(上記では利息と言っていましたが…)

を、市場参加者である投資家の視点から決定していって、数値を詰めていきます。

そうして出てきた答えが、収益価格になります。

収益価格のまとめ

収益価格は要するに、

  • その不動産を買いそうな投資家の目線に立って、
  • その不動産に対して想定する将来収支の予測を行って、
  • どの不動産に期待する収益率(利回り)を設定して、
  • 将来収益を現在価値に割り引いて、それを合算することで、

対象不動産の価格を求める方法です。

お疲れさまでした!

第2週目の第3日目、お疲れさまでした!

今回は、収益価格が有ったのできつかったと思いますが…ここでしっかり理解しておくと、後が楽になるので、しっかりイメージを掴んでください。

今回の講義をザックリまとめますと、

  • 7章は、まずは価格を求める3つの計算法に注力する
  • 比準価格と言うのは、似たような取引事例を補正して出した価格(取引事例比較法)
  • 積算価格と言うのは、土地・新築建物を積み上げて、建物が中古であることのマイナスを行った価格(原価法)
  • 収益還元法は、将来の収益の現在価値を合計したもので、
    • その物件を買いそうな投資家の視点に立って将来収益を予想し、
    • その物件を買いそうな投資家の視点に立って利回りを設定し、
    • 将来の収益を現在価値に割り戻して合計した価格

という事になります。

第4日目では、第7章の計算結果に基づいて鑑定評価額を決定していく流れを、ザックリと解説させていただきます。

まだ余力があるという方は…今日はみなさん無いでしょうね(苦笑)。

今回の内容に質問等のある方は、k-usui☆usui-rea.com(☆を@に変えてください)までメールしていただけましたら、概ね1週間程度で回答するよう努力します。

尚、メールを頂く際には、『不動産鑑定理論基礎講座本編』を読んだ旨・ご自身のお名前は必ずご記入くださいね。

それでは引き続き、どうぞよろしくお願いします。

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