鑑定士が価格を出す際までの大まかな流れと、ちょっと意外な考え方

1か月でザックリ分かる不動産鑑定理論基礎講座も2週目に突入しました。

2週目では、鑑定評価の流れをざっくりとトレースしていくわけですが、第1日目では、その総論的な話と、「こんな考え方をするんだ」という部分にスポットを当てていきます(基準の並び方でいうと、6章・7章・8章部分の大まかなイメージになります)。

進め方としては、「こんなイメージを持ってませんか?でも実はこうだよ!」という、「not○○but△△」型で進めていきたいと思います。

not「見れば分かる」but「まずは色々調べる」

まず、「不動産鑑定士なら不動産を見れば、値段が分かる」と思ってらっしゃる方も多いんじゃないかと思います(私も、この業界に入る前はそう思ってました)。

実際、宅建業者さんなんかは、そういう『相場観』がものすごく強いのですが、特定エリア・特定種類の物件に特化出来ない不動産鑑定士は、なかなかそこまでの『相場観』は形成し難いですし、「この物件なら、こんなもんっすよ!」って言っても説得力に欠けてお商売にもなりません。

ですので、ご相談を頂いた後に、色々調べて(調べる対象は、主に「価格形成要因」と言われるもので、総論第3章に列挙されています)、鑑定評価の基礎資料となる「情報」を蓄積していくことになります。

not「職業専門家」の視点but「購入者」の視点で考える

上記を行うことで、対象不動産に関する種々の「情報」が蓄積されていきます。

この蓄積された「情報」に「意味付け」をしていくことで、対象不動産の価格水準が見えてきます(ここが総論6章のイメージです)。

意味付けというのは、「駅から1.5km」という客観的な情報に対して、「歩くにはちょっと遠いけれど、和歌山は車社会だから、住宅地は駅距離よりも周辺環境が重視される。だから、駅から1.5kmというのは、和歌山のキレイな住宅地である対象不動産にマイナス要因にはならない。」というふうに評価を与えることです。

ここでちょっと意外なことなのですが、この意味付けは「職業専門家」の視点に立って行うのではなく、「主たる購入者」の目線に立って行うものと鑑定評価基準に定められています。

不動産の鑑定評価を行うに当たっては、価格形成要因を市場参加者の観点から明確に把握し、かつ、その推移及び動向並びに諸要因間の相互関係を十分に分析して、前記三者に及ぼすその影響を判定することが必要である(不動産鑑定評価基準 総論第3章 前文)

これは、鑑定士が出す鑑定評価額が、「あるべき価格」ではなく「今売れる価格・今買える価格」であるということの裏返しといえるでしょう。

ちなみに、訴訟において裁判官が心証形成をする際は、たまたま自分の趣味がその領域にあって、その分野にやたら詳しかったとしても、裁判の場においてはその知識に蓋をして、両当事者の主張・立証した内容のみに基づいて心証形成しなければならない、というルールが有ります。これに、少し似ていますね。

で、これを究極的に突き詰めると、不動産鑑定を行うにあたっての基礎事情・資料等についても、「主たる購入者」が認識・入手出来るものに限定する必要が有ると言うことになり、逆にいうと、「その不動産鑑定士が独自に集めた資料等」を使うのは基準の考え方に沿わないということになります。

ただ基準は、昔は「あるべき価格」を出すという発想(この場合は独自資料等も大歓迎)であったこともあって…この辺は曖昧になっています。

論理性を突き詰める方の場合、この矛盾で頭が混乱すると思いますが、まあ、基準も大変なので大目に見てやってください(笑)。

not「究極的な1つの式」で決定but「色んな視点」から検証を加えて決定

上記で掴んだ大まかな価格水準(総論6章のイメージ)を、次に数式に当てはめて検証していきます。

この際、定番式があって、これに当てはめると鑑定評価額が出てくるというものではありません。

鑑定評価基準 総論第7章には、異なる視点からなるいくつかの計算式が示されていて、

  • 上記の分析をベースにしながら(←ここは非常に重要!)これらの数式を適用し、
  • 出てきた結果を、あーだこーだ考えて(第8章の「試算価格の調整」)
  • 最終的に鑑定評価額を決定する(第8章の「鑑定評価額の決定」)

という流れになります。

お疲れさまでした!

第2週目の第1日目、お疲れさまでした!

ちょっと重た目の内容だったかもしれませんが、総論第6章〜総論第8章の内容は、鑑定評価基準の根幹に関わる部分ですので、気持ち悪かったらもう一度読んで、それでも分からなければ私にメールを頂いて、この段階で少なくともざっくりしたイメージを掴むようにしてください。

再度まとめますと、

  • not「見れば分かる」but「まずは色々調べる」
  • not「職業専門家」の視点 but「購入者」の視点で考える
  • not「究極的な1つの式」で決定 but「色んな視点」から検証を加えて決定

でした。

第2日目では、これを踏まえた「もう少し具体的な鑑定作業の流れ(第8章)」について解説させていただきます。。

まだ余力があるという方は、よろしければ以下のリンクから第2日目にお進みください。

⇒ もう少し具体的な鑑定作業の流れ(第8章)

また、今回の内容に質問等のある方は、k-usui☆usui-rea.com(☆を@に変えてください)までメールしていただけましたら、概ね1週間程度で回答するよう努力します。

尚、メールを頂く際には、『不動産鑑定理論基礎講座本編』を読んだ旨・ご自身のお名前は必ずご記入くださいね。

それでは引き続き、どうぞよろしくお願いします。

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